正則行列と逆行列

こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。

前回の記事では、行列同士の計算方法について解説しました。

さて、高校数学において、ある数(スカラー)aaに対して1a\frac{1}{a}逆数と呼び、これをある数に対して掛け合わせることで、割り算と同等の効果をもたらすことができることを学習したと思います。実は、行列についても、乗算をすると割り算をしたみたいになる「逆行列」という行列があります。今回は逆行列に関するお話をしたいと思います。

ここで、正則行列や逆行列は、正方行列(行数と列数が同じ行列)について適用される話であることに注意しましょう。つまり長方形の行列については考えません。

正則

正方行列について、掛け合わせると単位行列EEになるシチュエーションを考えます。

正則行列

nn次正方行列AAについて、

AB=BA=EAB=BA=E

となるnn次正方行列BBが存在するとき、AAは正則行列という。

例えば、

(3547)(7543)=(1001)\left( \begin{array}{cc} 3 & 5 \\ 4 & 7 \end{array} \right) \left( \begin{array}{cc} 7 & -5 \\ -4 & 3 \end{array} \right)= \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right) (7543)(3547)=(1001)\left( \begin{array}{cc} 7 & -5 \\ -4 & 3 \end{array} \right) \left( \begin{array}{cc} 3 & 5 \\ 4 & 7 \end{array} \right)= \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right)

なので、

(3547)\left( \begin{array}{cc} 3 & 5 \\ 4 & 7 \end{array} \right)

は正則行列ということができます。もちろん、視点を変えると、掛け合わせた相方もまた正則行列です。

わざわざ「正則行列」なんて言葉が用意されていることから察せるように、正方行列は必ずしも正則行列じゃないのですよね。

例えば、

(4623)\left( \begin{array}{cc} 4 & -6 \\ -2 & 3 \end{array} \right)

はどうあがいても正則ではありません。(掛けてEEになる行列を頑張って探しても無駄ですよ笑)

このように、正則行列である条件、正則行列でない条件などについては後の記事で扱います。

逆行列

正則行列に掛け合わせると E になる行列を逆行列と言います。要は正則行列の相方です。

逆行列

nn次の正則行列AAについて、

AB=BA=EAB=BA=E

となるnn次正方行列BBを逆行列といい、A1A^{-1}で表す。

ちなみに、逆行列は正則行列 1 つにつき、1 つしかありません。

逆行列はいつも一つ!

nn次の正則行列AAに対して、複数の逆行列が存在すると仮定し、その中の 2 つをB,BB,B'とする。

この時、AB=BA=EAB=BA=EAB=BA=EAB'=B'A=Eが同時に成り立つ。

B=BE=B(AB)=(BA)B=EB=BB'=B'E=B'(AB)=(B'A)B=EB=B

というわけで、BB以外の逆行列として挙げた行列は結局BBと同じものなので、逆行列はBBしかない。

逆行列は、行列をEEにする強い存在で、かなり重要な行列です。何記事かあとで、逆行列の求め方を扱います。

逆行列の性質

逆行列にはいくつかの性質を持ちます。

まず、

AABBnn次の正則行列ならば、ABABも正則で、

(AB)1=B1A1(AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1}

が成立します。括りをバラそうと思うと、掛け算の順番が入れ替わるのですね。

実際にABABとの掛け算を試みると、内側から次々とEEが錬成されて消えていくのがわかります。

【右から掛けてみる】

(AB)(B1A1)=A(BB1)A1=AA1=E(AB)(B^{-1}A^{-1})=A(BB^{-1})A^{-1}=AA^{-1}=E

【左から掛けてみる】

(B1A1)(AB)=B1(A1A)B=B1B=E(B^{-1}A^{-1})(AB)=B^{-1}(A^{-1}A)B=B^{-1}B=E

そして、

A1A^{-1}の逆行列(A1)1(A^{-1})^{-1}AA

という性質も持ちます。これはもはや視点を変えただけの話です。(正則行列の逆行列もまた正則行列だし、その逆行列はもとの正則行列)

あえて式を書くなら

A1A=EA^{-1}A=E AA1=EAA^{-1}=E

より、A1A^{-1}の逆行列はAAです。

おわりに

今回は、逆行列とは何なのかや、逆行列がもつ性質について学習しました。

次回の記事では、少し話を変えて、注意すべき行列の性質を、スカラーとの比較を交えながら解説したいと思います。

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