こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。
前回の記事では、写像の基本に関する話をしました。
今回からは、線型空間をターゲットにした議論が始まります。線形写像編のテーマである「線形写像」と、線形写像の中でも一定の条件を満たしたものである「同型写像」を扱います。
線形写像
ここでは、線型空間から線型空間への写像を考えます。このような写像の中で、一定の条件を満たすものを線形写像といいます。
\(F\)上の線型空間\(V,W\)に対して、写像\(f: V \rightarrow W\)が定義されている。
\(f\)が次の2条件をともに満たすとき、\(f\)は\(V\)から\(W\)への線形写像と言う。
- 任意の2要素\(\mathbf{a}, \mathbf{b} \in V\)に対して、次式が成立。
\[f(\mathbf{a} + \mathbf{b}) = f(\mathbf{a}) + f(\mathbf{b})\] - 任意の要素\(\mathbf{a} \in V\)と任意のスカラー\(\lambda \in F\)に対して、次式が成立。
\[f(\lambda\mathbf{a}) = \lambda f(\mathbf{a})\]
そして、この2つを併せ持つ性質を、線形性といいます。線形代数という科目は、線形性がテーマであり、それを持つものの性質を探るのが議論の対象でした。初回記事から40以上の記事を経て、ようやく線形代数の本質にたどり着きました!
線形写像の中でも、線型空間\(V\)から\(V\)自身へのもの(\(f: V \rightarrow V\))は線形変換または1次変換といいます。
核
線型空間には、零ベクトルという要素が存在しました。ある線形写像について、零ベクトルに対応する元の要素の集合を核といいます。
線形写像\(f: V \rightarrow W\)について、\(f(\mathbf{a}) = \mathbf{o}\)を満たす\(\mathbf{a}\)の集合を\(V\)の\(f\)による核といい、\(\mathrm{Ker} f\)と書く。
核\(\mathrm{Ker} f\)が集合\(V\)の部分集合であることは定義から明らかですが、実は\(V\)の部分空間でもあります。
同型写像
線形写像の中でも全単射のものを同型写像と言います。
同型写像をもつ2つの線型空間の関係性を表す同型という言葉があります。
ざっくり言うなら、同型な2つの線形空間は、線形空間としてほぼ同じものです。同型写像を用いることで、
- 両者の要素は1対1に完全対応している
- 和とスカラー倍の演算結果が両者で完全に対応している
状態を実現できるからです。
線形空間の理論は結局のところ、集合内の何らかの要素に対して和とスカラー倍をこねくりまわすことが原点にあります。上の2つを実現できる2集合は、線形空間として本質的に同じと言っても過言でないペアなのです。