【線形写像編】写像の基礎(像・全単射・写像の合成)

こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。

今回から、線形代数の中でも後半に習うことの多い「線形写像」をテーマにして数回の連載を始めます!

線形写像は、線形代数の講義の中でも抽象度が高い単元です。その代わり、線形写像の理論によって、連立方程式や図形ベクトルなど、線形代数で扱ってきた様々なモノをひとまとめにして考えることができます!

初回である今回は、線形写像の定義に先立ち「写像」の基本用語を解説します。

写像と像

2 集合の要素の対応を写像と言います。そして、ある写像によって対応づけられた「先」の要素もしくは集合をと言います。

2 つの集合SSTTがある。SSのどの要素もTTの何らかの 1 要素に対応しているとき、この対応付けを、集合SSから集合TTへの写像と言い、ffggなどの文字を使って次のように書く。

f:STf: S \rightarrow T

写像ffによって、集合SSのある要素ssに対応づけられた集合TTの要素を、s\underline{s}ffによると言い、f(s)f(s)と書く。次のように書くこともある。

f:sf(s)f: s \mapsto f(s)

集合SSの全て要素ssにそれぞれ対応する像f(s)f(s)をまとめてできる集合を、S\underline{S}ffによると言い、Imf\mathrm{Im} fと書く。Imf\mathrm{Im} fは、TTの部分集合である。

f(s)f(s)と記すなんて、まるで関数みたいですね。実際、高校の数学 II などで扱ってきた関数ffは、実数集合から実数集合への写像といえます。

上の画像の通り、対象元の集合や対象先の集合などに応じて、定義域値域などの用語が与えられています。これもまた関数みたいですね。

写像は、ある要素ssに対して、像f(s)f(s)がただ 1 つに決まることが前提です。f(s)f(s)となるTTの要素が複数ある場合、ffは写像ではありません。例えば、f(1)=3,4f(1)=3,4と定義されるような対応ffは写像ではありません。

単射と全射

単射(1対1の写像)

集合SSの要素が異なれば、対応するTTの要素も異なる写像ff単射または1 対 1 の写像と言います。

下の式を満たす写像ff単射または1 対 1 の写像と言う。

s1s2 ならば f(s1)f(s2)s_1 \neq s_2 \ \text{ならば} \ f(s_1) \neq f(s_2)

上の式は、その対偶をとって「f(s1)=f(s2)f(s_1) = f(s_2)ならばs1=s2s_1 = s_2」とすることもあります。

右の例は、SSの 2 つの要素がTTの 1 要素(● の要素)に対応しているので、単射ではありません。

全射(上の写像)

集合TTの要素全ての要素が、集合SSの何らかの要素と対応する写像ff全射または上の写像と言います。

集合TTの任意の要素ttに対して、f(s)=tf(s)=tとなる集合SSの要素ssが存在するとき、写像ff全射または上の写像と言う。

全射では、Imf=T\mathrm{Im} f = Tが成り立ちます。

右の例は、TTの要素の中にffの対応先にもなっていないものがある(■ の要素)ので、全射ではありません。

全単射

写像ffが単射かつ全射のとき、これを全単射と言います。簡単にいうと、両者の集合の要素が漏れなく 1 対 1 に対応する写像です。

写像の合成

関数に合成関数があったように、写像でも合成を考えることができます。

3 つの集合S,T,US,T,Uに対して、写像f:STf: S \rightarrow Tと写像g:TUg: T \rightarrow Uが定義されているとき、SSの要素ssUUの要素g{f(s)}g\{f(s)\}を対応づける写像を、ffgg合成写像といい、fgfgと書く。

fg:sg{f(s)}fg: s \mapsto g\{f(s)\}

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