こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。
前回の記事では、「逆行列」という特別な行列を扱いました。
さて、過去の記事を通じて、行列が今まで扱ってきた数(スカラー)と大きく異なる存在であることが分かったことと思います。しかし、行列特有の注意すべき特徴・性質がまだまだたくさんありますので、今回は、そんな性質について詳細に解説していきたいと思います。
スカラーと同じ性質
まずは、今までの数(スカラー)と同じ性質です。当たり前に感じる人にとっては非常に当たり前な話。
交換法則
和については、入れ替えても答えは変わりません。
結合法則
3 つの行列に対して和または積を計算するとき、その順番に関わらず答えば同じです。
(A+B)+C=A+(B+C)
(AB)C=A(BC)
前回の記事で足し算や掛け算の定義を扱いましたが、あれって 2 行列についてのものなんですよね。3 つ以上の計算は、2 行列の計算の繰り返しですので、計算する順番によらず答えが同じであるかはかなり重要です。
特に、掛け算ってあんなに複雑な計算方法なのに、掛け合わせる順番によらず答えが変わらないなんてすごいですよね(他人事)
分配法則
和と積の間に以下の関係が成り立ちます。
A(B+C)=AB+AC
(A+B)C=AC+BC
スカラー倍についても同様の関係が成り立ちます。
(λ+μ)A=λA+μA
λ(A+B)=λA+λB
指数法則
行列の冪乗について指数法則が成り立ちます。(ただしA−k=(A−1)kとします)
nとmが共に整数であるとき、
AnAm=An+m
(An)m=Anm
単位行列について
単位行列は、積の計算において「1」のような役割を果たします。これは、単位行列が以下の性質を持つからです。
AEとEAを定義することができるとき、
EA=AE=A
単位行列は、ある行列に対して左から掛けようが右から掛けようが、答えに変化をもたらしません。
零行列について
零行列は、和の計算において「0」のような役割を果たします。
OがAと同じ行数・列数を持つとき、
A+O=A
零行列は、ある行列に加えても答えに変化をもたらしません。
スカラーと大きく異なる性質
積の順序
前回の記事で書きましたが、積について交換法則は必ずしも成り立ちません!
行列AとBについて、
AB=BA
は必ずしも成立しない。
もう一度例を示します。
(1101)(1011)=(1112)
(1011)(1101)=(2111)
今後は掛け算の順序について細心の注意を払いましょう!
「零因子」の存在
今までの数(スカラー)では、「xy=0」ならばxとyのどちらか一方が0でした。しかし行列の場合、必ずしもこのようになりません。
A=OかつB=Oで、
AB=O
が成り立つA,Bが存在し、そのようなA,Bを零因子と呼ぶ。
積が零行列でも、掛け合わせている 2 行列が全然零行列でない例は結構よくあります。
(2−4−510)(52104)=(0000)
スカラーと同じ性質、全く違う性質をきちんと区別できるようになりましょう!!
おわりに
今回は、行列とスカラーの比較を通じて、行列の注意すべき性質を詳細に解説しました!
次回の記事では、超巨大な行列を扱うときに役立つ「ブロック分割」というテクニックについて説明したいと思います。
>>行列をいくつかのブロックに小分け!行列のブロック分割について