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おぐえもん
大学に通う理系学生です♪Webサイトやチラシ、冊子などのデザインや、システム開発などの経験があります。音楽が好きで、渋谷系サウンドが好物です!
たぶん今すぐ使えるテクニックから、きっと全く使えない豆知識まで。

行列のブロック分割

行列について考える上で、行列をカッティングして分割すると便利な時があります。ここでは行列の分割と、そのときの計算について扱います。

おぐえもん

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線形代数解説の定番サイト。大学1年生どころか再履のアホでも分かる丁寧な説明が特長。1年生前期〜後期の授業で学ぶ範囲を扱います。

こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。

前回の記事では、行列を扱う上で注意すべきことについて扱いました。

さて、行列の話で忘れてはならないのは、行列は\(2 \times 2\)行列や\(3 \times 3\)行列のようなミニサイズのものばかりでなく、その何回りも大きなサイズについても考える必要があることです。
$$
A=\left(
\begin{array}{cccccccccc}
a_{11} & a_{12} & a_{13} & a_{14} & a_{15} & a_{16} & a_{17} & \ldots & a_{1n} \\
a_{21} & a_{22} & a_{23} & a_{24} & a_{25} & a_{26} & a_{27} & \ldots & a_{2n} \\
a_{31} & a_{32} & a_{33} & a_{34} & a_{35} & a_{36} & a_{37} & \ldots & a_{3n} \\
a_{41} & a_{42} & a_{43} & a_{44} & a_{45} & a_{46} & a_{47} & \ldots & a_{4n} \\
a_{51} & a_{52} & a_{53} & a_{54} & a_{55} & a_{56} & a_{57} & \ldots & a_{5n} \\
a_{61} & a_{62} & a_{63} & a_{64} & a_{65} & a_{66} & a_{67} & \ldots & a_{6n} \\
a_{71} & a_{72} & a_{73} & a_{74} & a_{75} & a_{76} & a_{77} & \ldots & a_{7n} \\
a_{81} & a_{82} & a_{83} & a_{84} & a_{85} & a_{86} & a_{87} & \ldots & a_{8n} \\
\vdots & \vdots & \vdots & \vdots & \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
a_{m1} & a_{m2} & a_{m3} & a_{m4} & a_{m5} & a_{m6} & a_{m7} & \ldots & a_{mn}
\end{array}
\right)
$$
そのような大規模な行列も含めた、行列の一般的な性質を考える上で、行列を縦横で切って何個かの部分に分割すると、色々捗る場合があります。今回は、行列を小分けにするテクニック「ブロック分割」を解説します。

目次(クリックで該当箇所へ移動)

ブロック行列って何?

まずは例を示しましょう。以下の\(5 \times 5\)行列
$$
A=\left(
\begin{array}{ccccc}
a_{11} & a_{12} & a_{13} & a_{14} & a_{15} \\
a_{21} & a_{22} & a_{23} & a_{24} & a_{25} \\
a_{31} & a_{32} & a_{33} & a_{34} & a_{35} \\
a_{41} & a_{42} & a_{43} & a_{44} & a_{45} \\
a_{51} & a_{52} & a_{53} & a_{54} & a_{55}
\end{array}
\right)
$$
について、3列目の右を縦方向にカットし、4行目の下を横方向にカットすると、以下の4パーツが生まれます。
$$
\begin{eqnarray}
A_{11}&=&\left(
\begin{array}{ccc}
a_{11} & a_{12} & a_{13} \\
a_{21} & a_{22} & a_{23} \\
a_{31} & a_{32} & a_{33} \\
a_{41} & a_{42} & a_{43}
\end{array}
\right),A_{12}&=&\left(
\begin{array}{cc}
a_{14} & a_{15} \\
a_{24} & a_{25} \\
a_{34} & a_{35} \\
a_{44} & a_{45}
\end{array}
\right)\\
A_{21}&=&\left(
\begin{array}{ccc}
a_{51} & a_{52} & a_{53}
\end{array}
\right),A_{22}&=&\left(
\begin{array}{cc}
a_{54} & a_{55}
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}
$$
これで、もとの行列は次のように表されます。
$$
A=\left(
\begin{array}{cc}
A_{11} & A_{12} \\
A_{21} & A_{22}
\end{array}
\right)
$$
このような分割を、行列\(A\)のブロック分割と呼び、また、分割された小さい行列を小行列と呼びます。
縦横のカットが行列を貫いてさえいれば、カットの幅や高さは自由です。

行や列への分割

行列を行ごとや列ごとにカットするシチュエーションが多々あります。
【行ベクトルに分割】
$$
A=\left(
\begin{array}{c}
\boldsymbol{a_{1}} \\
\boldsymbol{a_{2}} \\
\vdots \\
\boldsymbol{a_{m}}
\end{array}
\right)
$$
【列ベクトルに分割】
$$
A=\left(
\begin{array}{cccc}
\boldsymbol{b_{1}} & \boldsymbol{b_{2}} & \ldots & \boldsymbol{b_{m}}
\end{array}
\right)
$$
こういった分割を、それぞれ「行への分割」「列への分割」といいます。

ブロック分割の演算

大きな行列を小行列の集まりだと見たときの計算について見てみます。

ブロック分割の和とスカラー倍

ここでの仮定

2つの大きな行列\(A,B\)があって、両者は行数も列数も同じのみならず、分割の仕方も同じものとします。
$$
\begin{eqnarray}
A&=&\left(
\begin{array}{cccc}
A_{11} & A_{12} & \ldots & A_{1n} \\
A_{21} & A_{22} & \ldots & A_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
A_{m1} & A_{m2} & \ldots & A_{mn} \\
\end{array}
\right)\\
B&=&\left(
\begin{array}{cccc}
B_{11} & B_{12} & \ldots & B_{1n} \\
B_{21} & B_{22} & \ldots & B_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
B_{m1} & B_{m2} & \ldots & B_{mn} \\
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}
$$
どの小行列も、\(A_{ij}\)と\(B_{ij}\)はサイズが一緒!

行列の和が、対応する成分同士の足し算だったことを踏まえると、和の小行列が2つの小行列の和になるのは明らかです。差についても一緒ですよ〜

ブロック分割の和

$$
A+B=\left(
\begin{array}{cccc}
A_{11}+B_{11} & A_{12}+B_{12} & \ldots & A_{1n}+B_{1n} \\
A_{21}+B_{21} & A_{22}+B_{22} & \ldots & A_{2n}+B_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
A_{m1}+B_{m1} & A_{m2}+B_{m2} & \ldots & A_{mn}+B_{mn}
\end{array}
\right)
$$

スカラー倍は各成分に掛け合わせるのでした。よって、各小行列にスカラーを掛けた場合と同じことになります。

ブロック分割のスカラー倍

$$
{\lambda}A=\left(
\begin{array}{cccc}
{\lambda}A_{11} & {\lambda}A_{12} & \ldots & {\lambda}A_{1n} \\
{\lambda}A_{21} & {\lambda}A_{22} & \ldots & {\lambda}A_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
{\lambda}A_{m1} & {\lambda}A_{m2} & \ldots & {\lambda}A_{mn}
\end{array}
\right)
$$

ブロック分割の積

めちゃくちゃ複雑な条件が伴います。

ここでの仮定

2つの大きな行列\(A,B\)があって、

  • \(A\)の列数と\(B\)の行数は同じ
  • \(A\)の列ごとの分割数と、\(B\)の行ごとの分割数も同じ
  • 小行列\(A_{ik}\)の列数と、小行列\(B_{kj}\)の行数が同じ

$$
\begin{eqnarray}
A&=&\left(
\begin{array}{cccc}
A_{11} & A_{12} & \ldots & A_{1r} \\
A_{21} & A_{22} & \ldots & A_{2r} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
A_{m1} & A_{m2} & \ldots & A_{mr} \\
\end{array}
\right)\\
B&=&\left(
\begin{array}{cccc}
B_{11} & B_{12} & \ldots & B_{1n} \\
B_{21} & B_{22} & \ldots & B_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
B_{r1} & B_{r2} & \ldots & B_{rn} \\
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}
$$
さらに!どの小行列も、\(A_{ik}\)の列数と\(B_{kj}\)の行数が一緒!

要は、これから出てくる式が定義できる(積の条件を満たす)ように条件づくりをしているわけです。

上の条件が整った時、\(A\)と\(B\)の積はこうなります。

ブロック分割のスカラー倍

$$
AB=\left(
\begin{array}{cccc}
C_{11} & C_{12} & \ldots & C_{1n} \\
C_{21} & C_{22} & \ldots & C_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
C_{m1} & C_{m2} & \ldots & C_{mn} \\
\end{array}
\right)\\
ただし、C_{ij}=\sum_{v=1}^{r}A_{iv}B_{vj}
$$

条件さえ整えば、ブロック分割した大きな行列同士の積は、小行列を成分みたいに扱って積の式を組むことができるのですね。

注意点

注意して欲しいのは、これらの式は行列を小行列の集まりとみなしたときの計算上の関係を示したものに過ぎず、演算結果の成分を求めたいときに、計算量が減るものではありません(むしろ手間が増えます)。
これらの関係式は、例えば大きい行列なんかで、行列の一部にしか用がないときに初めて役に立ちます。(無用な部分を計算する必要がないから)

おわりに

今回は、行列を縦横に分断して考える「ブロック分割」というテクニックについて、その性質を交えて解説しました。

これで、線形代数のキホンにあたる部分は終了です!これからは、「連立方程式」と絡めた議論や、「行列式」という特別な指標を交えた議論、さらには高校時代の空間ベクトルに立ち返るリバイバル企画など、様々なネタが展開されていきます。決してゴールは近くないのですが、一歩ずつ頑張っていきましょう!

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