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おぐえもん
大学に通う理系学生です♪Webサイトやチラシ、冊子などのデザインや、システム開発などの経験があります。音楽が好きで、渋谷系サウンドが好物です!
たぶん今すぐ使えるテクニックから、きっと全く使えない豆知識まで。

【固有値編】行列の対角化と具体的な計算例

行列の対角化って何?どこで便利?具体的な方法は?対角化の基本について1から解説します。

おぐえもん

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線形代数解説の定番サイト。大学1年生どころか再履のアホでも分かる丁寧な説明が特長。1年生前期〜後期の授業で学ぶ範囲を扱います。

こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。

前回の記事では、行列の対角和(トレース)と呼ばれる指標の性質について扱いました。今回は、行列の対角化について扱います。

目次(クリックで該当箇所へ移動)

対角化とは?

行列の対角化と対角化可能

ある正方行列\(A\)に対して適当な正則行列\(P\)を用意すると、積\(P^{-1}AP\)が対角行列になることがあります。このようにして対角行列を作ることを対角化と呼び、対角化できるような\(P\)が存在することを対角化可能と呼びます。

行列の対角化と対角化可能

ある正方行列\(A\)に対して、次の式が成立する正則行列\(P\)が存在するとき、\(A\)は対角化可能という。
$$P^{-1}AP= \left[
\begin{array}{cccc}
a_1 & 0 & \ldots & 0 \\
0 & a_2 & \ldots & 0 \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
0 & 0 & \ldots & a_n
\end{array}
\right]$$
また、そうして対角行列を作ることを対角化という。

対角化の便利なところ

対角化の良いところの1つに、行列の\(n\)乗計算が楽になることが挙げられます。

対角行列の\(n\)乗は、元の対角成分の\(n\)乗を成分にもつ対角行列になります。(以下は簡単な例)
$$A = \left[
\begin{array}{cc}
x & 0 \\
0 & y
\end{array}
\right] \rightarrow A^n = \left[
\begin{array}{cc}
x^n & 0 \\
0 & y^n
\end{array}
\right]
$$
よって、行列の\(n\)乗を計算する際は、対角化をして、対角行列の累乗を求めると楽なのです。
$$
\begin{eqnarray*}
(P^{-1}AP)^n&=&P^{-1}APP^{-1}AP \cdots P^{-1}AP \\
&=&P^{-1}AA \cdots AP \\
&=&P^{-1}A^nP
\end{eqnarray*}
$$
より

$$A^n = P(P^{-1}AP)^nP^{-1}$$

\((P^{-1}AP)^n\)は対角行列の\(n\)乗なので楽勝です。

固有値との関係

対角化によって生み出された対角行列の成分、そして対角化で用いた\(P\)の列ベクトルにはある関係性があります。

対角化と固有値・固有ベクトル

$$P^{-1}AP= \left[
\begin{array}{cccc}
a_1 & 0 & \ldots & 0 \\
0 & a_2 & \ldots & 0 \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
0 & 0 & \ldots & a_n
\end{array}
\right]$$が成立するとき、
\(P=(\boldsymbol{p_1} \ \boldsymbol{p_2} \ \ldots \ \boldsymbol{p_n})\)とすると、成分\(a_1\)〜\(a_n\)はそれぞれ行列\(A\)の固有値であり、列ベクトル\(\boldsymbol{p_1}\)〜\(\boldsymbol{p_n}\)は固有値\(a_1\)〜\(a_n\)にそれぞれ対応する固有ベクトルである。

つまり、対角化という操作には、行列の固有値・固有ベクトルがオールスター的に登場するのです。

こうなる理由は結構簡単にわかります。次の例は、2次正方行列を用いたものですが、どんな次元でも確かめられます。

まず、対角化可能な2次正方行列\(A\)を用意します。\(A\)はある2次の正則行列\(P=(\boldsymbol{p_1} \ \boldsymbol{p_2})\)を用いて次のように対角化できます。
$$P^{-1}AP= \left[
\begin{array}{cc}
\alpha & 0 \\
0 & \beta
\end{array}
\right]$$

あとはこれを変形するだけです(下の式は、上の式の両辺に左から\(P\)をかけたところから始まります)。

$$
\begin{eqnarray*}
AP &=& P \left[
\begin{array}{cc}
\alpha & 0 \\
0 & \beta
\end{array}
\right] \\
A(\boldsymbol{p_1} \ \boldsymbol{p_2}) &=& (\boldsymbol{p_1} \ \boldsymbol{p_2}) \left|
\begin{array}{cc}
\alpha & 0 \\
0 & \beta
\end{array}
\right| \\
(A\boldsymbol{p_1} \ A\boldsymbol{p_2}) &=& (\alpha\boldsymbol{p_1} \ \beta\boldsymbol{p_2})
\end{eqnarray*}$$

これはつまりこういうこと、
$$
\begin{cases}
A\boldsymbol{p_1} = \alpha\boldsymbol{p_1} \\
A\boldsymbol{p_2} = \beta\boldsymbol{p_2}
\end{cases}
$$
まさに、固有値・固有ベクトルの定義の式ですね。ここから、\(\alpha\)と\(\beta\)が固有値であること、\(\boldsymbol{p_1}\)と\(\boldsymbol{p_2}\)がそれぞれの固有値に対応する固有ベクトルであることがわかりました。

対角化可能の条件

対角化は全ての正方行列でできるとは限りません。しかし、次のような条件が成立するならば、対角化をすることができます。

対角化可能の条件に関する定理

\(n\)次の正方行列\(A\)について次の命題が成立する。
\(A\)は互いに一次独立な固有ベクトルを\(n\)個持つ \(\Longleftrightarrow\) \(A\)は対角化可能

この定理から、対角化可能であるか調べる場合は、

  1. 固有値を求める
  2. 対応する固有ベクトルを求める
  3. 次数と同じ数の固有ベクトルが互いに一次独立か調べる

の3ステップを経ることになります。

実際に対角化してみよう!

次の行列を対角してみましょう!
$$A = \left[
\begin{array}{cc}
5 & 3 \\
4 & 9
\end{array}
\right]$$

Step1. 固有値と固有ベクトルを求める

次のような固有方程式を解けば良いのでした。
$$\left|
\begin{array}{cc}
5-t & 3 \\
4 & 9-t
\end{array}
\right|=0$$
左辺の行列式を展開して、変形すると次の式のようになります。
$$
\begin{eqnarray*}(5-\lambda)(9-\lambda)-3*4 &=& 0\\
(\lambda -3)(\lambda -11) &=& 0
\end{eqnarray*}$$
よって、固有値は「3」と「11」です!

次に固有ベクトルを求めます。

これは、「\(A\boldsymbol{x}=3\boldsymbol{x}\)」と「\(A\boldsymbol{x}=11\boldsymbol{x}\)」をちまちま解いていくことで導かれます。

面倒な計算を経ると次の結果が得られます。

「3」に対する固有ベクトルの”1つ”→ \(\left(\begin{array}{c}-3 \\ 2\end{array}\right)\)

「11」に対する固有ベクトルの”1つ”→ \(\left(\begin{array}{c}1 \\ 2\end{array}\right)\)

Step2. 対角化できるかどうか調べる

対角化可能の条件「次数と同じ数の固有ベクトルが互いに一次独立」が成立するか調べます。上に掲げた2つの固有ベクトルは、互いに一次独立です。正方行列\(A\)の次数は2で、これは一次独立な固有ベクトルの個数と同じです。

よって、\(A\)は対角化可能であることが確かめられました

Step3. 固有ベクトルを並べる

最後は、2つの固有ベクトルを横に並べて正方行列を作ります。これが行列\(P\)となります。
$$P = \left[
\begin{array}{cc}
-3 & 1 \\
2 & 2
\end{array}
\right]$$
このとき、\(P^{-1}AP\)は対角行列になるのです。

Extra. 対角化チェック

せっかくなので対角化できるかチェックしましょう。

行列\(P\)の逆行列は
$$P^{-1} = \frac{1}{8} \left[
\begin{array}{cc}
-2 & 1 \\
2 & 3
\end{array}
\right]$$です。

頑張って\(P^{-1}AP\)を計算しましょう。
$$
\begin{eqnarray*}
P^{-1}AP &=& \frac{1}{8} \left[
\begin{array}{cc}
-2 & 1 \\
2 & 3
\end{array}
\right]
\left[
\begin{array}{cc}
5 & 3 \\
4 & 9
\end{array}
\right]
\left[
\begin{array}{cc}
-3 & 1 \\
2 & 2
\end{array}
\right] \\
&=& \frac{1}{8} \left[
\begin{array}{cc}
-6 & 3 \\
22 & 33
\end{array}
\right]
\left[
\begin{array}{cc}
-3 & 1 \\
2 & 2
\end{array}
\right] \\
&=&
\left[
\begin{array}{cc}
3 & 0 \\
0 & 11
\end{array}
\right]
\end{eqnarray*}
$$ってことで、対角化できました!対角成分は\(A\)の固有値で構成されているのもわかりますね。

おわりに

今回は、行列の対角化の方法について計算例を挙げながら解説しました!

次回は、対角化の対象として頻繁に用いられる、「対称行列」の対角化について詳しくみていきます。

>>対称行列が絶対に対角化できる理由と対称行列の対角化の性質