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おぐえもん
大学に通う理系学生です♪Webサイトやチラシ、冊子などのデザインや、システム開発などの経験があります。音楽が好きで、渋谷系サウンドが好物です!
たぶん今すぐ使えるテクニックから、きっと全く使えない豆知識まで。

【固有値編】対称行列の対角化の性質と必ず対角化できる理由

対称行列は絶対に対角化できます。対称行列の対角化に焦点を当て、その理由と性質を見ます。

おぐえもん

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線形代数解説の定番サイト。大学1年生どころか再履のアホでも分かる丁寧な説明が特長。1年生前期〜後期の授業で学ぶ範囲を扱います。

こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。

前回の記事では、行列の対角化とは何かについて説明しました!

行列の対角化って、全ての行列でできる訳ではありません。しかし、対称行列を相手にするなら絶対に対角化することができるのです。

今回は、「対称行列」の対角化にフォーカスを当てて、その性質などを見ていきたいと思います。

目次(クリックで該当箇所へ移動)

要約

今回の記事で言いたいことは次の二つです。

  • 対称行列は直交行列を使えば絶対に対角化できますよ
  • 逆に直交行列は対称行列以外の行列を対角化できませんよ

この結論を得ただけで満足な方は次の記事へ進みましょう笑

一方で、”その心”を知りたい方は以降の説明をどうぞ!

行列のおさらい

今回は、対称行列と直交行列がキーになるので一旦復習しましょう。

対称行列とは

対称行列とは、行列の対角成分を軸に右上と左下が対称になっている正方行列(正方形の行列)のことです(例えばこんなん↓)。
$$A = \left[
\begin{array}{cccc}
1 & 6 & 4 \\
6 & 7 & 12 \\
4 & 12 & 3
\end{array}
\right]$$

もう少し厳密に言うなら、転置にしても変わらない行列のことです(次式が成り立ちます)。$${}^tA=A$$

そもそも行列の成分は、実数だったり複素数(虚数\(i\)を含む数)だったりするわけですが、ここでは実数の成分だけをもつ行列を扱います。実数のみを成分として持つ行列のことを特に実対称行列と呼びます。

直交行列とは

直交行列とは、転置との積が単位行列\(E\)になる行列です。
$${}^tAA=E$$
つまり、転置が逆行列そのものである行列のことを言います。
$${}^tA=A^{-1}$$

対称行列は直交行列で対角化できる!?

さて、前置きで語った通り、行列の対角化は、必ずしも全ての行列でできる訳ではありません。しかし、対称行列ならば直交行列を使うことで、絶対に対角化することができるのです。

直交行列で対角化できる理由は、行列がもつ次の2つ性質を組み合わせて説明できます。

  1. 固有値が全て実数の行列は三角化可能
  2. 実対称行列の固有値は全て実数

性質1. 固有値が全て実数の行列は三角化可能

実正方行列(成分が全て実数の正方形な行列)の中でも、固有値が全て実数であるものは、適当な直交行列を用いることで「三角化」できることが知られています。三角化とは、「\(P^{-1}AP\)」を計算して、対角成分の左下が全てゼロになるような行列を作る作業のことを言います。

例えばこんなん↓
$$P^{-1}AP = \left[
\begin{array}{cccc}
1 & 6 & 4 \\
0 & 7 & 12 \\
0 & 0 & 3
\end{array}
\right]$$

三角化については以下の記事で解説しています。

【固有値編】正方行列の三角化とは?方法と計算例も紹介
https://oguemon.com/study/linear-algebra/triangularization/

性質2. 実対称行列の固有値は全て実数

実対称行列は固有値として複素数を含みません!つまり、実対称行列は「性質1」の対象となる行列なんですね。

この性質が成り立つ理由は、複素数の固有値が存在すると仮定して、その共役(虚数部分の+−を変えたもの)と比較することで示せます。以下は簡単な証明です(どうでも良いなら飛ばしてください)

簡単な証明

まず、実対称行列\(A\)が持つ複素数の固有値の1つを\(\lambda\)とします。また、この固有値の共役を\(\bar{\lambda}\)とします。

\(\lambda\)は固有値なので、「\(A\boldsymbol{x} = \lambda\boldsymbol{x} \)」が成り立ちます。この式は、両辺の各要素を共役に置き換えても成立します。つまり、「\(\bar{A}\bar{\boldsymbol{x}} = \bar{\lambda}\bar{\boldsymbol{x}}\)」も成り立ちます。

\(A\)の成分は全て実数(虚数部分が0)なので、\(A=\bar{A}\)です。よって、上の式は次のように変えられます。
$$A\bar{\boldsymbol{x}} = \bar{\lambda}\bar{\boldsymbol{x}}$$

次に両辺の転置を考えます。2行列について「\({}^t(AB)= {}^tB{}^tA\)」が成り立つこと、実対称行列\(A\)は「\(A= {}^tA\)」であることに注意すると、次式が成立します。
$${}^t\bar{\boldsymbol{x}}A = \bar{\lambda} {}^t\bar{\boldsymbol{x}}$$

ここで、突然ですが「\(\bar{\lambda}{}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x}\)」をちまちま変形します。
$$\bar{\lambda}{}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x} =
{}^t\bar{\boldsymbol{x}}A\boldsymbol{x} = {}^t\bar{\boldsymbol{x}}\lambda\boldsymbol{x} =
\lambda{^t\bar{\boldsymbol{x}}}\boldsymbol{x}
$$
よって、\(\bar{\lambda}{}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x} = \lambda {}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x}\)が成立します。

ところで、「\({}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x}\)」は、互いに共役の関係にある2ベクトルの内積(つまりスカラー)です。「\((a+bi)(a-bi)=a^2+b^2>0\)」より、
$${}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x} = \bar{x_1}{x_1}+\ldots+\bar{x_n}{x_n}>0$$が成立します。よって、\({}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x} \neq 0\)なので、「\(\bar{\lambda} {}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x} = \lambda{}^t\bar{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{x}\)」の両辺から内積を割って、$$\lambda = \bar{\lambda}$$となります。

共役と値が同じということは、\(\lambda\)の虚数部分は0、つまり固有値\(\lambda\)は実数ということを表します。

対角化ができるワケ

さて、この2つを組み合わせると、対角化できるワケがわかります。

性質2より、実対称行列は固有値が全部実数なので、性質1より、実対称行列は三角化ができることがわかります。つまり、実対称行列\(A\)に対して、ある直交行列\(P\)を用意することで、次の式のように三角化できます。
$$P^{-1}AP= \left[
\begin{array}{cccc}
a_{11} & a_{12} & \ldots & a_{1n} \\
0 & a_{22} & \ldots & a_{2n} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
0 & 0 & \ldots & a_{nn}
\end{array}
\right]$$

次は左辺の転置を考えます。ちまちま式変形をしましょう。ここで、\(P\)は直交行列なので「\(P{}^tP=E\)」つまり、「\(P^{-1}={}^tP\)」が成り立つこと、そして\(A\)は対称行列なので\(A={}^tA\)が成り立つことに注意してくださいね。
$${}^t(P^{-1}AP) = ({}^tP{}^tA{}^tP^{-1}) = P^{-1}AP$$

これより、「\({^t(P^{-1}AP)}=P^{-1}AP\)」要するに\(P^{-1}AP\)が対称行列であることが示されました。

  • \(P^{-1}AP\)は左下が全部ゼロの三角行列である
  • \(P^{-1}AP\)は対称行列である

の2点から、\(P^{-1}AP\)は右上もゼロであることがわかります。これは\(P^{-1}AP\)が対角行列であることに他なりません

ゆえに、実対称行列\(A\)は直交行列を用いて対角化できることが言えます。

直交行列が対角化できるのは対称行列だけ!

対称行列は、直交行列を用いて対角化できます。逆に、直交行列を用いて対角化できる行列は対称行列しかありません。これも簡単な式変形で示せます。

下式の\(P\)は、\(A\)を対角化するのに用いる直交行列です。もちろん、\(P^{-1}AP\)は対角行列(対角成分以外がゼロで揃っているので対称行列でもある)ですよ。
$$P^{-1}AP={}^t(P^{-1}AP)={}^t({}^tPAP)={}^tP{}^tAP=P^{-1}{}^tAP$$
上の式の左端と右端から、下式が成立します。
$$P^{-1}AP=P^{-1}{}^tAP$$
両辺に対して、左から\(P\)を、右から\(P^{-1}\)を掛けると、「\(A={}^tA\)」になります。つまり、直交行列で対角化できた場合、\(A\)は対称行列であるということがわかります。

前の項で述べた「対称行列なら直交行列で対角化できる」って話と組み合わせると、直交行列による対角化と、対称行列の間には、次のような同値関係が成立します。

直交行列による対角化の必要十分条件

\(n\)次の実正方行列\(A\)について、
\(A\)が対称行列である \(\Longleftrightarrow\) \(A\)は直交行列によって対角化可能

おわりに

今回は、対称行列の対角化にフォーカスを当てて、その性質を簡単に説明しました。

要するに、対称行列は直交行列を使えば絶対対角化できますよって話と、直交行列は対称行列に対してじゃないと対角化できませんよって話の2つを抑えられればOKです。

次回は、対角化よりも少し弱い変形である「三角化」について扱います!

>>行列の三角化とは?方法と計算例も紹介