こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。
前回の記事では、逆行列を求めるための方法について扱いました。逆行列を利用することで、連立方程式の解を求められますが、解の求め方として行列式を用いる方法も存在します。今回は、連立方程式の解を行列式で表す「クラメルの公式」について扱います。
クラメルの公式とは
これは、連立方程式の解の求め方に関する定理です。早速いきましょう!
クラメルの公式
連立方程式Ax=bについて、その解xの第i成分をxiとする。
このとき、以下の式が成立する。
xi=∣A∣∣Ai∣
ここで、Aiは、行列Aのi列目をbに置き換えた行列である。
このように、連立方程式の解は、2 つの行列の行列式の割り算で表現できるというシンプルな公式です。
これが成り立つ理由は、逆行列の公式を利用することで確かめられます。
x=A−1b=∣A∣1A11A12⋮A1nA21A22⋮A2n⋯⋯⋱⋯An1An2⋮Annb1b2⋮bn
ここで、掛け算の定義などから、xのi行目の成分は次のように表されます。
xi=∣A∣1(A1ib1+⋯+Anibn)
この式の下線部に余因子展開の臭いを感じますね〜
実は、下線部は、行列Aのi列目をbに置き換えた行列の、i列成分に対する余因子展開に一致します。つまり、下線部の値は上の公式における「A_i」の行列式∣Ai∣になります。
よって、
xi=∣A∣1∣Ai∣=∣A∣∣Ai∣
が導かれました。
一緒に例題を解こう
次の連立方程式の解を求めましょう。
⎩⎨⎧2x1−2x2+3x3=73x1+2x2−4x3=−54x1−3x2+2x3=4
Step1: 行列で表す
行列を用いた式に変換すると次のようになります。これを用いて解を求めることになります。
A=234−22−33−42b=7−54
ついでに、A1〜A3も求めておきます。
A1=7−54−22−33−42
A2=2347−543−42
A3=234−22−37−54
Step2: 行列式を求める
さて、行列式を求めましょう。ここでは導く過程を省略して、結果だけを記しておきます(計算量はかなり多いです)。
∣A∣=−23,∣A2∣=−46,∣A1∣=−23,∣A3∣=−69
Step3: 解を求める
あとは割り算をするだけです。
x1=∣A∣∣A1∣=−23−23=1x2=∣A∣∣A2∣=−23−46=2x3=∣A∣∣A3∣=−23−69=3
以上で解が求まりました。
x=123
実際に初めの連立方程式へ解を代入すると、式が成立することが確かめられます。
これって便利なの?
クラメルの公式は、式の形こそシンプルですが、n次正方行列の行列式をたくさん求める必要があるため、次数が多いと莫大な計算量になります。実際に問題を解く場合は、特別な指定がない場合、シンプルに消去法(ガウスの消去法)などを用いることをお勧めします。使い道があんまりないのにわざわざページ割く意味ある?とか言うなー!!
おわり
今回はクラメルの公式について扱いました。次回は、行列式編の最後を飾る記事として、行列式の観点からみる連立方程式の解の性質などについてみていきます!