サイト内検索

あらゆるワードの関連記事を検索できます!

おぐえもん
大学に通う理系学生です♪Webサイトやチラシ、冊子などのデザインや、システム開発などの経験があります。音楽が好きで、渋谷系サウンドが好物です!
たぶん今すぐ使えるテクニックから、きっと全く使えない豆知識まで。

【固有値編】ケーリー・ハミルトンの定理とよくある間違いを解説

ケーリー・ハミルトンの定理とは何なのか、そして成立の理由を説明。定理を証明する上で勘違いしがちなポイントにも触れます。

おぐえもん

本カテゴリ
線形代数解説の定番サイト。大学1年生どころか再履のアホでも分かる丁寧な説明が特長。1年生前期〜後期の授業で学ぶ範囲を扱います。

こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。

前回の記事では、任意の正方行列を三角化することについて具体的な計算方法を含めて扱いました。

今回は、三角化を用いて証明をすることができる定理の一つ、ケーリー・ハミルトンの定理を解説します。

目次(クリックで該当箇所へ移動)

ケーリー・ハミルトンの定理とは

最初からどうでも良い話ですが、ケーリーさんとハミルトンさんは別人です。

2次正方行列に対する定理

ケーリー・ハミルトンの定理って昔の理系高校生にとって常識でした。というのも、行列が扱われていたかつての教育課程における定番定理だったんですよね。

当時の高校生が習った定理は次の通り。

高校生にとってのケーリー・ハミルトン定理(簡単版)

2次の正方行列\(A=[a_{ij}]\)について、次の式が成立する。
$$A^2-(a_{11}+a_{22})A+(a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21})=O$$

上の公式は、2次の正方行列にしか適用できないのですが、ケーリー・ハミルトンの定理自体はあらゆる次元の行列に適用できる公式を提供しています

n次正方行列に対する定理

大学生が習うのは次に掲げる様々な次元に適用可能な公式です。先ほどの例はあくまで下の公式を2次の場合に限定したときのものにすぎません。

ケーリー・ハミルトン定理(本家)

\(n\)次の正方行列\(A\)について、その固有多項式を\(\phi(t)=|A-tE|\)とする。この時、次の式が成立する。
$$\phi(A)=O$$
ただし、\(\phi(t)\)は\(|A-tE|\)を展開した後の多項式であること。そして右辺は零行列であることに注意されたい。

固有多項式は、スカラーを変数として持つことを前提にした多項式ですが、変数にスカラーでなく行列\(A\)を代入したとき、面倒な行列演算を経た暁に零行列(スカラーの「0」でない)となることを表しています。

成り立つ理由

\(n\)次の正方行列\(A\)の固有値を\(\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n\)とすると、固有多項式\(\phi(t)\)は次の式で表せます。
$$\phi(t) = (\lambda_1 – t)(\lambda_2 – t)\cdots(\lambda_n – t)$$
これはケーリー・ハミルトンの定理の前提なのですが、多項式のスカラーだった部分は単位行列\(E\)で掛け合わせられます。つまり、行列版\(\phi(A)\)は次の通り。

$$\phi(A) = (\lambda_1E – A)(\lambda_2E – A)\cdots(\lambda_nE – A)$$

ここで、\(P^{-1}AP\)の登場です。三角行列に変換できる\(P\)を用意して、\(P^{-1}\phi(A)P\)を計算しましょう。
$$P^{-1}\phi(A)P = P^{-1}(\lambda_1E – A)(\lambda_2E – A)\cdots(\lambda_nE – A)P$$
\(PP^{-1}=E\)なので、適当な箇所に\(PP^{-1}\)を掛けても結果は変わりません。
$$
\begin{eqnarray*}
P^{-1}\phi(A)P &=& P^{-1}(\lambda_1E – A)PP^{-1}(\lambda_2E – A)PP^{-1}\cdots PP^{-1}(\lambda_nE – A)P \\
&=&(\lambda_1E – P^{-1}AP)(\lambda_2E – P^{-1}AP)\cdots(\lambda_nE – P^{-1}AP)
\end{eqnarray*}
$$
ここで、\(P^{-1}AP\)は対角成分として左上から順に固有値\(\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n\)を持つ三角行列です。よって\((\lambda_iE-P^{-1}AP)\)は、左上から\(i\)番目の対角成分が0の三角行列となります

\(P^{-1}\phi(A)P\)は、「左上の対角成分がゼロの三角行列」「左上から2番目の対角成分がゼロの三角行列」…を左から掛け合わせた積であるわけですが、この積は零行列となります。実際に左から計算してみると、左から右に向かって1列ずつ零ベクトルになっていきます。

そうして、\(P^{-1}\phi(A)P=O\)が示されたので、両辺の左から\(P\)を、右から\(P^{-1}\)を掛け合わせることで、
$$\phi(A)=O$$を得ることができます。

よくある証明の間違い

長ったらしい証明を経たわけですが、一部の読者は次のように思ったでしょう。

\(\phi(t)=|A-tE|\)に\(t=A\)を代入して、
$$\phi(A)=|A-AE|=|O|=0$$で良くね!?

これ、手取り早い上に一見正しそうなのですが、実は間違いです。

上の式では、\(|A-tE|\)を零ベクトルの行列式に持ち込んで、これを計算して答えを0としているわけですが、そもそもケーリー・ハミルトンの右辺ってスカラーの0じゃなくて零行列でしたよね?右辺の形式が異なる時点で的外れです。

ケーリー・ハミルトンの定理は展開後の多項式に元の行列\(A\)を代入してチマチマ計算すると、最終的に全ての成分が0(零行列)になることを表しています。右辺はスカラーでないことに注意を払いましょう。

おわりに

今回は、ケーリーハミルトンの定理を三角化を用いて証明してみるとともに、良くある間違いについても説明しました。

次回は、同じく三角化を用いて証明が可能なフロベニウスの定理について扱います。

>>フロベニウスの定理を例題込みで解説