こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。
前回の記事で置換についてバッチリ学習できたと思います。いよいよ行列式の定義について扱いたいと思います。
行列式の定義
行列式の定義は、置換の概念がふんだんに用いられた形になっています。
定義は次の通り。
行列式の定義
n次の正方行列A=[aij]について、行列式∣A∣は以下の式で定義される。
∣A∣=σ∈Sn∑sgn(σ)a1σ(1)a2σ(2)⋯anσ(n)
ただしSnはn文字の置換(全n!通り)の集合である。
簡単に言えば、こんな感じ。
- ある置換を用意します。
- 置換の上行を行番号に、下行を列番号に対応付けます。(i行σ(i)列成分を探す)
- 対応付けで特定されたn個の成分(a1σ(i)〜anσ(n))を掛け合わせます。
- 用意した置換の符号を掛け合わせます。(奇置換→マイナス/偶置換→プラスを付ける)
- 以上の作業を全ての置換に対して行います。
まだ分かりにくいと思うので、例を示します。
行列式を求める例
超シンプルに、2次の正方行列を例に挙げます。
A=(a11a21a12a22)
まずは、全ての置換を列挙します。2文字の置換は2!=2通り。以下の二つです。
σ1=(1122), σ2=(1221)
ここで、σ1は偶置換、σ2は奇置換ですので、両者の符号は
sgn(σ1)=1, sgn(σ2)=−1
ですよね。偶(奇)置換や、置換の符号については前回の記事をご覧あれ。
さて、行列式を求めていきましょう。
置換σ1から手をつけます。σ1では、
σ(1)=1, σ(2)=2
ですので、1行1列成分の「a11」と、2行2列成分の「a22」を掛け合わせます。(a11a22)。
置換σ1の符号は1なので、+a11a22ですね。
次に置換σ2を扱います。σ2では、
σ(1)=2, σ(2)=1
でしたので、1行2列成分の「a12」と、2行1列成分の「a21」を掛け合わせます(a12a21)。
置換σ2の符号は−1なので、−a12a21ですね。
以上から、
∣A∣=sgn(σ1)a1σ1(1)a2σ1(2)+sgn(σ2)a1σ2(1)a2σ2(2)=a11a22−a12a21
が導かれました。
これは以前の記事で扱った 2 次正方行列における行列式の定義と同じです。以前に与えた「公式」たちは、こういった複雑な定義に基づき導かれたものだったのです。
余力がある人は 3 次正方行列の行列式も導いてみましょう!(前回の記事で扱った例が役に立ちます!)
行列式について押さえておくと捗ること
- 足し引きされる項の数は、全部でn!個です。これは、置換の総数から明らかですね。
- 足す項と引く項は同数です。これは、n文字の置換の総パターンの中で、奇置換と偶置換が同数だからです。
- 足し引きされる項のそれぞれは、絶対に 「ある行から1つ」かつ「ある列から1つ」の成分を掛け算したものになっています。 つまり、同じ行または同じ列の2成分を掛け合わすことはありません(a12a22みたいな項は現れない)。これは、これから扱う行列式の性質をイメージする上で重要です!!
おわり
行列式の定義については以上です。次回は、行列式の性質について説明したいと思います。