こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。
西国三十三所巡礼記の9回目は、第九番札所の興福寺(奈良県)です!
興福寺とは?


興福寺(こうふくじ)は、奈良県奈良市にある寺院です。「古都奈良の文化財」として、東大寺や春日大社などと共に世界遺産に登録されています。
飛鳥時代に藤原鎌足が京都に建てたお寺がはじまりで、いくつかの変遷を経て、鎌足の子である藤原不比等が平城京遷都(710年)と同時にお寺を現在の場所に移転、興福寺と改名しました。
興福寺は、古くは藤原氏の氏寺で、平安〜室町時代において奈良県全域を領するほど強い力を持ちました。有名な比叡山延暦寺と並べて「南都北嶺」と称される寺社勢力の代表格でした。
広大な興福寺の境内にある「南円堂」というお堂が、西国三十三所巡礼の第九番札所として扱われています。
興福寺は奈良の中心部にあり、すぐ近くには東大寺や春日大社、奈良公園などの名所があります。現在も奈良観光の定番スポットとして多くの観光客が訪れています。
興福寺のここがすごい!
国宝指定の仏像数が全国トップ
興福寺は奈良時代のスタートと同時に歴史がはじまり、古代から中世にかけて膨大な規模と絶大な力を持っていました。そのため、貴重な文化財が数多く存在します。
特筆すべきなのが国宝指定の仏像数。文化庁の国指定文化財等データベースによると、2020年1月現在、「彫刻」カテゴリで国宝指定されている作品は全国で全136件。その中で興福寺所有の仏像は18件で、所有件数において全国1位です。ちなみに2位は法隆寺の17件。
日本を代表する仏像の1つである、奈良時代作の阿修羅像(あしゅらぞう:上の画像)も、興福寺が所有する国宝仏像の1つです。


興福寺が所有する国宝・重要文化財の多くは、境内にある「国宝館」にて拝見することができます。
奈良で最も高い建物「五重塔」(国宝)


大阪府で一番高い建物はあべのハルカス、神奈川県で最高の建物は横浜ランドマークタワー、といったように、都道府県最高の建物はどこも現代的な摩天楼が並ぶもの。しかし、奈良県で最も高い建物は数百年前にできたお寺の伽藍です。
東金堂(国宝)の隣にある五重塔は、約600年前の1426年頃に建てられたものですが、高さは50.1mと奈良県で最高の高さを誇ります。ちなみに、次に高い建築物は東大寺の大仏殿で49.1m。歴史的建造物が上位を占める都道府県は奈良県だけ!
木造の五重塔としては、京都の東寺にある五重塔に次ぐ高さを誇ります。
1300年前の姿が蘇った最新建築「中金堂」


創建時から興福寺の最重要建築で、かつ興福寺の中で最も新しい建物が、この中金堂。
何度も焼失と再建を繰り返して1819年に7回目の再建として仮のお堂が建てられましたが、老朽化を理由に2000年に解体されました。そして、2018年10月に1300年前の様式を再現した新しい中金堂が完成しました。
完成直後なので、朱色の柱は鮮やかで、金色の鴟尾(しび:しゃちほこみたいなアレ)は眩しいくらいに輝いています。
多くの旅行会社が奈良観光の目玉として掲げるホットな建物です。
鹿がいっぱい!


奈良といえば鹿。興福寺の境内も例外ではなく鹿がたくさんいます。というのも、興福寺は、鹿で有名な奈良公園の真横にあるのです。興福寺の北参道から奈良公園の石碑を見ることができます。


ちなみに、奈良公園とその周辺に生息する鹿は全て野生動物で、国から「奈良のシカ」との名称で天然記念物に登録されています。
奈良公園の中に境内を持つ、藤原氏の氏社である春日大社(768年創建)は、主神が白鹿に乗って奈良の地にやってきたという伝説に基づき、同じく藤原氏の氏寺である興福寺と共に近辺に住む野生の鹿を神鹿として手厚く保護してきました。こうして長い歴史を経て今も奈良の中心部では野生の鹿と人間が共存しています。
公共交通での行き方
興福寺の最寄駅は、近鉄「近鉄奈良駅」です。近鉄のみならずJR奈良駅からも徒歩で行ける便利な場所にあります。ただし、JRからだと15分程度歩くので、近鉄がオススメです。
近鉄「近鉄奈良駅」下車、東へ徒歩5分。
近鉄奈良駅は2番出口を出るのがオススメです。出口はこんな感じ。


出口からは、太い道(県道754号)をそのまま沿って歩くだけで大丈夫です。ね?簡単でしょ?


駅前に掲げられていた周辺地図です。近鉄奈良駅を東に進んだ先、県道の南側に興福寺が広がっています。


てくてく歩くと、興福寺にある西国九番南円堂の石碑が見つかります。もう興福寺はすぐそばです。
旅行記
西国九番「南円堂」(重要文化財)


興福寺の中でも、この南円堂こそが西国三十三所の第九番札所です。興福寺・醍醐寺・三井寺など、お寺自体の本尊が観音菩薩でない大寺院では、観音菩薩を本尊とするお堂が札所として扱われます。
南円堂は、八角形をしたお堂で、その歴史は813年まで遡ります。現在の建物は、1789年の再建で4代目の建築です。ちなみに、八角形のお堂としては日本最大です。
本尊の不空羂索観音菩薩(普段は非公開)は、上半身に鹿皮をまとっていて、藤原氏の氏社、春日大社との関連を感じさせます。


お堂の中にある、本尊と木造四天王立像、木造法相六祖坐像は国宝に指定されています。「国宝館」を持ちながらも、1つのお堂の中に3種類の国宝仏像が安置されてるなんて興福寺凄い!
ただし、南円堂の扉は常に閉ざされています。南円堂が特別に開扉されるのは、年に1度、10月17日の大般若経転読会のときのみです。
東金堂(国宝)


五重塔の左にある建物です。中金堂の東側にある金堂なので、東金堂。726年に聖武天皇が建てたのが始まりで、今の建物は1415年に再建された6代目です。
どっしりとした姿と、前面が吹き放たれた開放的な造りが魅力的です。
三重塔(国宝)


南円堂の裏側にひっそりと佇んでいます。1143年に初めて建てられ、1180年に一度焼失したあと、鎌倉時代の間に再建された2代目です。興福寺にある鎌倉時代の建築は、三重塔と後述する北円堂の2つで、興福寺最古の建築の1つです。高さは19m。
北円堂(国宝)


三重塔の前を通る道を北に進んだところにある、南円堂と同じ八角形の建築です。元明・元正天皇が721年に藤原不比等の一回忌に際して建てたのが始まりで、三重塔と同じく1180年に焼失した後、1120年頃に再建されました。三重塔と建築時期が近いからか、木の色みや柱の組み方などが三重塔と似ています。
北円堂は、普段は柵で覆われていて近づくことができません。春(GW前後)と秋(文化の日前後)のみ特別に開放されます。
興福寺の魅力はまだまだ!
この記事では、(撮影可能なので)興福寺の建築を中心に扱いましたが、仏像や絵画などにもたくさんの魅力があります!
特に国宝館には、教科書にもある有名な仏像や、運慶・快慶一門が作ったどこまでもリアルな彫刻が並んでいて、そのコンテンツ量とそれぞれの造形美は圧巻でした。
こればかりは現地に行かないとわからないので、読者の皆さんには是非とも興福寺でその凄さを味わっていただきたいです!興福寺からは、奈良公園や東大寺、春日大社へ歩いて行けるので1日で奈良を存分に楽しめます。
次回は、京都・宇治の閑静な山麓に位置する西国第十番「三室戸寺」です!