【心理学】人間を操る3つの方法(『影響力の武器』)(#25)
こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。
ここ数日、『影響力の武器(ロバート・B・チャルディーニ著)』という書籍を読んでます。人間の行動パターンやそれを引き出す方法を心理学の研究結果と一緒に紹介する本です。読心術などのパフォーマンスで世間の注目を受けていたメンタリスト DaiGo が、自身がメンタリストを志すキッカケになった本として紹介してました。
『影響力の武器』は、人を操ることに繋がる心理学的なテクニックを「影響力の武器」と呼んでいます。
この本、すごく面白いので、今回は、本の中で取り上げられていた「影響力の武器」のいくつかを紹介します。
今回の記事で紹介する心理学的な行動パターンを知っておくことで、次の 2 点ができるようになります。
- 人に物事をお願いするときに注意すべき点を知ることができる。
- 様々なセールス手法の裏側を見透かして、今までより冷静に判断できる。
早速いきましょう!
1. 最初に相手に決めさせる
一貫性の原理とは
人間には、一貫性を保とうとする心理パターンがあります。一度なんらかのポジションを取ると、そこからポジションと一貫した行動を取ろうとするというものです。これだけだと抽象的なので、例を挙げます。
- 一度他人に自分の目標を話せば、その目標を達成するように行動する。
- 約束をしたら、それを実現しようとする。
- 競馬で、ある馬を選んだら、その馬が勝つと信じてやまなくなる。
一貫性のある人が信頼されるので、ある意味こうした傾向があるのは当たり前ですよね。これに加えて、いくつかの面白い性質があります。
自分で決めると一貫性が高まる
他人に強要されるよりも、自分でポジションを決めた方が、そのポジションに対する一貫性が高まります。
上の例で言うならば、他人に押し付けられた目標よりも、自分で立てた目標 or 他人が勧めたものの自分で納得して自ら選択した目標の方が、目標を達成しようとする動きが強くなるという感じです。
自分で決めると、その決定の責任が自分にあると感じてしまうので、一貫性を保とうとする動きがより強くなるのです。
得るのが難しい方が、得た時の満足が増す
あるものを選んで購入したら、それがより良いものと感じる(愛着がわく)なんて現象も、一貫性の原理のひとつです。これについて、簡単に手に入るものよりも、得るのにコストがかかったものの方が、それを良いものと思うようになります。
書籍では、学生向けの討論クラブを立ち上げて調査した研究が紹介されていました。入会条件の厳しさと、入会後の満足度の関係性を調査したところ、入会条件が厳しい方が、クラブの活動が大したことないにも関わらず、それが有益であると評価する人の割合が増えたとのことでした。
例えば、高校や大学では普通の学校よりも難関校の方が愛校心を持っている人が多い気がするんですが、これもこの心理が影響してそうですね。
一貫性を用いたセールスの技
まず、「最初に有利な条件を示して最初に判断させる」というテクがあります。
例えば、車を売るとき、値段の割引などを使って最初に顧客に購入の意思を引き出すことができれば、後から不利なこと(例えば ◯◯ 円のオプションが別途必要など)を顧客に告げても、多少ならば購入の意思が翻りません。
そして、「購入を希望されますか?」と質問するなどして、購入の意思を顧客に直接言わせることで、判断の責任を顧客自ら感じさせて、より一貫性の原理を強めようとするのです。
他にも、一部のブランド品は、モノに対してやたらと高額だったりしますよね。これも、ブランド価値が値段に反映されているという実情こそあるのですが、これ以外にも「手に入れるのが難しい → 手に入れてからの満足度が高い」という心理を用いて満足度向上に繋げている側面もあります。
人にお願いするときは、承諾しそうなことから話して、早めに OK を貰いましょうね〜
2. こちらから何かを施す
返報性の原理とは
人間には、なにか施しを受けると、これに対するお返しをしないと気が済まない心理があります。これを返報性の原理といいます。
- プレゼントを貰ったら、そのお返しをしなくてはと考えるようになる。
- 友達に手伝ってもらったら、今度なにかお礼をしなくてはと考えるようになる。
- 試食を食べると、その商品を買わないと申し訳なくなる。
人間社会はお互いを助け合う社会なので、きちんとお返しができる人、つまり利益を独り占めにしない人の方が信頼されます。なので、こうした性質を持つのも当たり前のように見えます。
これまた面白い性質があります。
ありがたさに関係ない
返報性の原理がはたらくのは、ありがたいものをいただいたからではありません。
例えば、試食を食べたとき、「お腹が満たされてハッピー!」「こんなに美味しいものをタダでくれるなんて!」なんて思って感謝している人なんてほとんどいませんよね(笑)
さらには、人は自分が頼んだお願いでない余計なお世話ですら、それを恩義と感じてしまい、お返しの義務を感じる心理がはたらきます。
「譲歩」に対しても効く
返報性の原理は、「0 から 1」の施しだけでなく、「10 から 5」の配慮に対しても恩義を感じます。
例えば、相手との交渉が進まないとき、相手が妥協して譲歩したら、そのことに恩義を感じて、こちらもいくらか妥協しなければという気持ちになります。
返報性を用いたセールスの技
いわゆる「エビで鯛を釣る」みたいなテクですよね。
例えば、上で挙げた試食の例は、返報性を利用した立派なセールステクニックです。ウィンナーの切れ端を無理やり食べさせることで、買わないと申し訳ない気持ちをお客さんに感じさせて、ウィンナーを 1 袋買わせる。はじめに少しばかりの「施し」が必要ですが、結局大きなリターンが得られるので、トータルだと儲けになりますよね。
「譲歩」の返報性を利用した交渉テクには、「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」という名前が付いています。これは、契約交渉のときに
- 【自分】めっちゃ高額であるなど、最初にめちゃくちゃ自分に有利な条件を示す。
- 【相手】(当然ながら)断る。
- 【自分】値段を少し下げるなど、条件を少し譲歩して、再提示する。←これが本来結びたい条件
- 【相手】一度断った申し訳なさ、譲歩されたことに恩義を感じて、これで良いかと思うようになる。
- 【自分】うっしっし
という流れを踏む手法です。「割引商品」などには注意してくださいね!
人にお願いするときは、まずは自分がその人に施しを与えましょうね〜
3. 周りに流させる
社会的証明の原理とは
人間は、よくわからない状況・判断に迷う状況にいるとき、周りにいる人の選択を真似する傾向にあります。これは、割とそのまんまですよね。
- ある会場に向かう途中、駅を出て方向が分からないときに周りの人の流れに付いていく。
- ある講演を聴いている時、周りの様子にあわせてリアクションする。
- 自殺のニュースが報道されると、後追いの自殺が多発する(ウェルテル効果)。
これにも、いくつかの性質があります。
似たような属性の人の真似をしがち
周りにいる人の選択を真似するとき、その辺にいる人なら誰でも良いというわけでなく、似たような属性(年齢・性別など)の人の真似をする傾向の方が強くなります。
本の中では、子供の事例をあげていました。浮き輪がないとプールに入れない子供から浮き輪を外そうとしたとき、大学院生のコーチを雇っても状況が変わらなかったにも関わらず、同い年の子供が浮き輪なしでプールを泳いでいるを見るや否や、浮き輪を外すことができたということでした。
真似の内容は必ずしも正しくない
これ、ものすごく重要で、かつ、ものすごく怖い性質です。たとえ間違った選択であったとしても、人間は周りがその選択をしているのを見たら真似してしまうのです。
上で挙げたウェルテル効果はその例です。死のうかどうか迷っている状態で、自分と同じような状態にある人が自殺したことを知ると、自殺を選択してしまう傾向があるのです。
また、過去には
- みんなが見ていたのに、誰も止めなかったから発生した、暴行殺人事件。
- たくさんの人がいたのに、誰も助けなかったから発生した、急病人の死亡。
- 集団自殺
など、悲しい事件・事故が複数発生しています。社会的証明の原理は、これらの原因の一つと考えられています。
社会的証明を用いたセールスの技
最たるものが、サクラです。
本の中では面白い事例が取り上げられていました。
今やスーパーマーケットに標準装備されていた「ショッピングカート」は、1937 年に発明されました。カゴを持って買い物をしている人を観察したところ、カゴを重く感じたときに買い物をやめる傾向に気付いたので、カゴの重さを感じさせなくするために考案されたそう。しかし、登場当初は世間に受け入れられなかったので、サクラを駆使して普及を実現したらしいです。
テレビで流れる笑い声の SE も一例です。どこが面白いのか分からない視聴者に、番組の笑いどころを示すために活用されています(賛否は分かれてますが…)。
心理学テクを学んで活用&用心しよう!
『影響力の武器』では、上記以外にも多くの心理学テクが様々な研究結果とともに紹介されていました。
心理学的な行動パターンを学ぶと、それを駆使して人を説得する術を知ることができます。このことも大事なのですが、同じようにして自分を思い通りに操ろうとする人間、広告に対して警戒心を抱くことができる点も重要です。むしろ、そっちの方が実用の機会が多いような気がします^^
武道は、人をやっつけるだけでなく、自分の身を守ることにも役立ちます。心理学も同じような形で活用していきたいですね。