【線形代数本】売れる本を作るための表紙のヒミツ(#18)
こんにちは、おぐえもん(@oguemon_com)です。
前回の記事で、おぐえもん.com の線形代数記事が書籍化される話を書きました。
あれからの進展として、本書の表紙が仮ながら完成しました!(このあと載せます!)
表紙というものは、書籍の認知や、買う・買わないの判断においてめちゃくちゃ重要な役割を果たします。
今回は、表紙を作るにあたって重視した点などを書きたいと思います。本屋で表紙を見る目が変わるかも!?
できた表紙
こちらです!
デザインは私が僭越ながら担当しました。多くの場合、専門のデザイナーが表紙デザインを考えるのですが、本書のコンセプトを私自身の手によって表紙の形で表現したかったので、無理を言って私に作らせていただきたいとお願いしました。
表紙は書籍の命
なぜ、表紙に対してこだわりを持ったのかというと、表紙は売り上げに結びつく極めて重要な存在だからです。
本の購入プロセスを振り返ります。
- 本屋へ行く(オンラインサイトへアクセスする)
- 本棚から表紙を眺める(サイトの検索結果画面からサムネを眺める)
- 表紙に興味を抱いた本にのみ、それを手に取って中身をざっと眺める(試し読みする)
- 自分が求める内容かを吟味して購入を判断する
これを踏まえて表紙の役割を見ると次の 2 点が浮かびます。
- ブランドのない無名の本は表紙がダサいと売れない
- 無名の本は、表紙がちゃんとしていないと(宣伝が上手くない限り)売れません。表紙の第一印象が本の購入における一種の足切りみたいな要素をはらんでおり、ダサい表紙(お客さんが興味を持たない表紙)は見向きもされないからです。ちなみに、有名な本(古くからの名著など)は、名指しで買われるので、これに当てはまりません。
- 表紙のイメージと実際の中身が一致していないと売れない
- 表紙に興味をもっていざ開いても、思っていたのと違う中身だったら本棚に戻されます。つまり、表紙に対して抱くイメージと実際の中身がリンクすることが購買において重要になります。
そして、無名の本はお店に特別の宣伝をお願いできるだけの"力"をもっていないので、表紙がほぼ全てです。ちなみに、書店では平積み(表紙が見えるように陳列されること)される可能性も低いので「背表紙」がほぼ全てになります。
ゆえに、表紙にこだわって、「興味が出る表紙」「中身との一致がある表紙」を作ることが、本を広く読んでもらうための必要条件になります。
今回の表紙にこめた色々
今までは、販売の観点での表紙の重要性を書きましたが、実際はより色々な役割を果たします。今回、表紙を作るにあたって次の目標を立てて制作しました。
ターゲットに対して"のみ"響く
本書のターゲットは、線形代数の初学者(主に大学 1 年生)の中で、線形代数の内容をざっくり学びたい人です。そこで、その人たちに響く表紙が必要です。
逆に、ターゲット以外は見向きされなくとも大丈夫です。例えば数学を知らない人が本の表紙を見ていきなり「線形代数」を学ぼうと思うわけないからです。
これを踏まえて、「線形代数入門」の文字をデカデカと示して、需要にど直球に応えるタイトル・表紙を採用しました。
このアプローチは、本屋にある多くの本と少し異なります。多くの本(特に実用書)は、ふらっと本屋へ立ち寄って「なんか面白い本ないかな」と探している人が基本的なターゲットです。なので、凝ったタイトルや表紙を作って、お客さんが思わず買ってしまうことを狙っています。実用書と参考書の間にあるタイトル・表紙のアプローチの違いに気づくことができたのは、今回表紙を自ら作ったからこそでした。
分かりやすさが伝わる
本書のウリは、線形代数が分かりやすく解説されていることです。この特徴を表紙を見ただけで直感してもらえるデザインを追求しました。
その特徴が最も出ているのが、使っているフォントです。角が丸い「丸ゴシック体」は、ゴシック体や明朝体と比べて柔らかい印象を与えるため、分かりやすさをウリにする実用書の多くで採用されています。こうした傾向を踏まえて、表紙で使うフォントはほぼ全て丸ゴシック体で統一しました。
他にも、色数を抑えてシンプルな印象を作ったり、文字の随所に適当なあしらいを加えて情報が整理されている印象を作ることで、「分かりやすさ」が滲み出る表紙に仕上げました。
ずっと使おうと思える
本書は入門書といえど、大学 1 年生で習う内容を押さえているくらいには内容が充実しています。そのため、数日で読み切るのではなく、長期間にわたって利用されることが前提です。なので、長く使ってもらえることを念頭においた表紙が重要です。
私が長く使っているものを眺めて考察した結果、長く使える表紙とは、「気品」「美しさ」「洗練」が込められた表紙ではないかと考えました。これらが欠けていると、どうしても読み切りの消費物としての書籍の印象を受けてしまいます。
この価値観に従って、表紙に比較的高いデザイン性を持たせられるよう努力しました。
目標は、ずっとカバンに入れていられるような表紙、友人に本を尋ねられて平気で見せられるような表紙です。
遠目に見て「あの本」と思える
同ジャンルの別の本と明らかな違いがなければ、どうしても見た人の印象に残りません。なので独自性は重要です。
表紙を作るにあたって、従来の線形代数本の表紙あるあるを極力排除しました。
- やたら太いゴシック体 or 明朝体
- 余白埋めとしか思えない、タイトルと全く関係のない謎の写真や3D物体
- 売る気ゼロのださすぎるデザイン etc...
これについては、あまりにも既存の線形代数本の表紙がアレだったので、おのずと表紙から独自性が出たと自負してます。
なんで著者名が本名なの?
学術書で、著者名が「おぐえもん」とか胡散臭スギという、それだけの理由です。そして、逆に著者名が一般的な人名さえあればあまり怪しまれることがありません(私だけ?)。なので、無難に本名を選びました。